人工甘味料トレハロースで感染症が急増?

トレハロースとは?

 

そもそもトレハロースとは、どんな食品添加物なのでしょうか?

 

トレハロースとは、動植物の細胞内にも存在する天然の糖質です。

 

 

トレハロースは甘みをつけるというよりも、その優れた保水性を利用して、品質保持のための保存料として使用されることが多いです。

 

 

 

例えば、お米やケーキなどを冷蔵すると硬くパサつきますが、トレハロースを添加するとしっとりとした状態が保たれます。

 

 

タンパク質を多く含む食品にも添加すると劣化を防ぐことができます。

 

 

野菜の水分を保持して加熱時の鮮度を保持します。

 

 

 

さらに脂質の変質も抑え、過酸化物質の発生も抑制するなど、食品添加物として非常に利用価値が高いことが知られています。

 

 

 

しかも、トレハロースは摂取した時に血糖値をゆっくりと上昇させることから「体に良い糖質」とさえ思われていました。

 

 

 

トレハロースの原料は、トウモロコシやじゃがいものデンプンですが、原料が遺伝子組換え作物である可能性を除いては「天然である」ということと、トレハロースそのものの毒性が低いことから、比較的安全な食品添加物と認識され使用されてきた背景があります。

 

 

 

和菓子、洋菓子、冷凍食品、麺類・ごはん類、パン、肉や魚の加工品、清涼飲料など、様々な食品に使用されています。

 

 

コンビニに置いてあるような食品には必ず使われています。

 

 

 

皆さんも、身の回りの食品に「トレハロース」の文字がないか見てみてください。

 

 

致死性の感染症の急増は人工甘味料トレハロースのせい?

 

皆さんは、クロストリジウム・ディフィシルという細菌を聞いたことがありますか?

 

 

2001~2006年にかけて、クロストリジウム・ディフィシル(以下「Cディフ」)という細菌による重篤な腸炎が、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国で突如として増加しました。

 

 

 

Cディフは本来腸内に存在する菌ですが、免疫機能が低下した人では腸炎を起こして場合によっては重篤になることが知られていました。

 

 

しかし、2001年から始まったようなアウトブレイク(大流行)になることは過去にありませんでした。

 

 

 

Cディフにもいくつか種類がありますが、どういう訳かRT027株とRT078株の感染者が

突如と増えて重篤な状態に至っているのがここ近年の謎でした。

 

 

現在では年間に約3万人もの死者を出すCディフは、抗生物質が効かない「スーパーバグ」かもしれないと考えられていました。

 

 

今回のベイラー医科大学のグループによる研究によると、Cディフはスーパーバグになった訳ではなく、人工甘味料のトレハロースが患者の増加に関連しているかもしれないという意外な結果が出というのです。

 

 

研究グループは、RT027株とRT078株を詳細に調べました。

 

すると、この二つの株は必要な栄養素として非常に低濃度のトレハロースを利用していることが分かりました。

 

 

そこでこの2株のゲノム情報を解析してみると、低濃度のトレハロースを利用できるメカニズムがDNAレベルで明らかとなったのです。

 

RT027株はトレハロースを代謝する回路のブレーキが効きにくい変異を起こしており、一方RT078株はトレハロースの代謝を促進する4つの遺伝子を獲得していたのでした。

 

これらの変異により、通常のCディフは増殖しないような環境でも、この2株は低濃度のトレハロースを利用して増強され、高い病原性を示す可能性があるというメカニズムが分かったというのです。

 

 

続いて、研究グループはマウスを用いて病原性を検証しました。

 

 

RT027株の遺伝子を操作してトレハロースを代謝できないようにしました。

 

 

すると、RT027株の病原性が低下して、感染したマウスの生存率も向上しました。

 

 

一方で、マウスのエサにトレハロースを加えると、RT027株に感染した時に生存率が著しく低下したのでした。

 

 

 

マウスの生存率が下がったのは、RT027株が増殖したというよりも、トレハロースを利用して毒性が高まったからであるということも示唆されました。

 

 

RT078株に関しても、4つの遺伝子のうちPtsTという遺伝子がトレハロースの存在下でこの株の増殖を増強するということが分かりました。

 

 

 

さて、ここまででRT027株とRT078株がトレハロースを利用して病原性を高め、感染したマウスの生存率を低下させるということが分かりました。

 

 

しかし、人間の腸内でも同じ状況が起きるのでしょうか?

 

 

もちろん人間を感染させる実験などできませんから、研究グループは、ヒトの小腸内からサンプルを採取して、トレハロースの濃度を測定してみました。

 

 

すると、RT027株が活性化するだけのトレハロースが検出されたのでした。

 

 

つまり、人間の腸内でもマウスの感染と似た状態が起きうることが示唆されました。

 

 

 

 

2001年から突如としてアウトブレイクとなったCディフですが、RT027株が一番最初に患者から発見・単離されたのは1985年のことです。

 

 

しかし、1985年から16年間、RT027株が致死性の腸炎を起こしたり、大流行したりということはありませんでした。

 

 

何故16年もの月日を経て、突如としてアウトブレイクが起きたのかがこれまで謎でした。

 

 

ここで、トレハロースの認可と食品添加物としての利用開始のタイミングが持ち上がります。

 

 

 

1995年までは、トレハロースは製造コストが非常に高い食品添加物でした。

 

 

そのため、一部の化粧品や試薬にしか使われていませんでした。

 

 

製造法の開発競争が続いていた中、1994年に岡山のデンプン糖化メーカーである「林原」が、安価に大量生産する方法の開発に成功し、生産コストがそれまでの100分の1にまで下がりました。

 

 

それを受けてアメリカ食品医薬局(FDA)は2000年に、ヨーロッパでは2001年にトレハロースを「安全な食品添加物」として認可をしたのです。

 

 

そしてこの直後に、世界中でのCディフに感染した患者が急増しました。

 

 

1985年にRT027株が最初に発見されてから2001年までの16年間には2件ほどしか流行の記録がありませんが、2001年から2012年の11年間にはざっと数えて世界中で30件もの流行が報告されています。

 

 

このことから、研究グループはトレハロースが認可されて広く使用されるようになった背景がこれらのアウトブレイクに関与しているのではいかと示唆しています。

 

 

 

 

 

トレハロースは食品添加物としてはリスクがありますが、医薬品、試薬、日用品など、食品添加物以外でも有用な側面があります。

 

 

例えば、組織やタンパク質の保護作用を利用して臓器移植時の保護液等にも利用されることがありますし、クールビズや防臭効果をうたった繊維に利用されることもあります。

 

 

製造業にとても有用な物質であったトレハロースですが、食品添加物としては予測だにしなかった感染症への影響が明るみに出てきました。

 

 

日本では西洋諸国のようにCディフは流行していませんが、近年ではアジアでも報告されています。

 

 

日本でのトレハロースの使用を今一度慎重に検討しなおす時がやってきそうですね。

 

 

 

 

本日も最後までお読みくださりありがとうございました。

 

 

 

 

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