第二次世界大戦中に米海軍が開発した「2分以内に眠りにつく方法」とは?
第二次世界大戦中、
アメリカ海軍のパイロットの多くが、
戦闘から受けるプレッシャーと
ストレスによって衰弱していました。
その結果「友軍機を誤って撃墜する」
「本来なら回避可能な状況で撃墜される」
などの事例が多く報告され、
アメリカ海軍はパイロットたちの
ストレスを緩和させる必要性に迫られました。
そこでアメリカ海軍は、
バド・ウィンター氏ら研究者を招き、
パイロットをリラックスさせる方法を開発し、
海軍学校に通うパイロット候補生を対象にテストを行いました。
バド・ウィンター氏は
大学で心理学の教授を務める一方で、
戦前から陸上選手のコーチとしても知られていました。
ウィンター氏は
「睡眠は肉体的にも精神的にもリラックスしている状態である」と定義し、
「あらゆる状況下で、昼夜問わずいつでも2分で寝ることができるようにする」
ことをトレーニングの目的に設定し、
「肉体的にリラックスする方法」と
「精神的にリラックスする方法」
の2つをパイロット候補生たちに伝授したとのことです。
1.肉体的にリラックスする方法
初めに、ウィンター氏は2つのリラックス法のうち、
以下の「肉体的にリラックスする方法」
をパイロット候補生たちにトレーニングさせました。
椅子に深く腰掛けて、
足を床につけて、両膝を開いて伸ばします。
手は膝の間に置きます。
目を閉じて、顎を胸の上にのせるように引きます。
ゆっくりと深く、定期的に深呼吸しながら、
顔の筋肉は全て緩ませるように意識します。
眉間にシワを寄せず、舌や唇さえもリラックスさせ、
目の周りの筋肉にも力を入れないように気をつけます。
そして、肩から力を抜いて、
首の後ろの筋肉がマヒしそうなほどぐったりと落とします。
自分は「椅子の上に垂れるクラゲ」だとイメージしながら、
深呼吸とともに全身の筋肉をゆるませます。
左右の上腕・ふくらはぎ・ふとももなど、
全ての筋肉へ順番に語りかけるように、
意識的に力を抜いていきます。
もし、なかなか力が抜けない筋肉があれば、
その筋肉に一度ぐっと力をこめてから
わざと緊張させてから緩めます。
これらを繰り返しながら全身をゆるませたら、
最後に3回ゆっくりと深呼吸を行います。
これで肉体が完全にリラックスでき、
睡眠状態に移行する準備ができるとのことです。
2.精神的にリラックスする方法
ウィンター氏は、
「肉体的にリラックスすることさえできれば、10秒で眠ることができる」
と主張しています。
ただし、その10秒間で「動きのあること」について
考えるのはよくないそうです。
例えば「腕を動かす」イメージを脳内で行うと、
実際に動かしていなくても
腕の筋肉は緊張してしまうとのことで、
動きのあることをイメージすると
肉体的なリラックスが失われてしまいます。
動きのあるイメージを排除するために、
ウィンター氏によるトレーニング・プログラムでは
以下の3つのイメージトレーニングが提案されています。
・春の日に、静かな湖の上でカヌーに横たわって
青空を見上げている様子をイメージし続ける
・闇の中で巨大な黒いハンモックに揺られている状況をイメージする
どれも10秒以上、継続して行うことが重要だと、ウィンター氏は主張しています。
海軍学校では、
リラックスのトレーニングを受けるコースと、
徹底的に精神を鍛えるコースの2つに分けて、
比較テストが行われました。
その結果、リラックスのトレーニングを受けたコースの方が、
さまざまなテストや訓練において良い成績を出していたそうです。
そして、6週間のトレーニングによって、
パイロットたちの96%が
2分以内にいつでもどこでも
寝ることができるようになったとのことです。
さらに、コーヒーを飲んだり、
爆音や砲火でうるさい状況下でも、
すぐに眠りにつくことが可能になったそうです。
なお、戦後にウィンター氏は自分がコーチを務める選手へ、
海軍パイロットに授けたものと同じリラックス法を伝授しました。
そのかいもあってか、ウィンター氏は
オリンピックにおける陸上競技のアメリカ代表を27人も輩出し、
今なおアメリカ陸上界における
伝説のコーチとして知られています。
戦争のストレスを解消するために
開発されたリラクゼーションのプログラムは、
日常生活のなかでストレスと
疲労を蓄積した一般の人びとにも十分効果があると、
ウィンター氏は信じていたそうです。
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