お盆期間中にクルマでの交通事故が多発し当院でも交通事故治療をしている方がいらっしゃいます。
一般の方は人身事故と物損事故の違いがわからず被害になった方が損になる場合が多いのも事実です。
今回から人身事故と物損事故の違いを数回にわたり説明していきます。
交通事故に遭ったとき、物損事故として扱われるか人身事故として扱われるかによって、大きく結果が異なってきます。
物損事故になると、加害者にとってはメリットが大きいですが、逆に被害者にとっては大きなデメリットがあります。
交通事故直後は精神が動揺するので身体の痛みがわからず、物損事故で届けたけれど、数日後に身体のあちこちに痛みがでてくるケースもあります。
そういう場合は、交通事故で怪我をした場合に物損事故として届け出てしまったら、後から人身事故の取扱に変えてもらう必要があります。
人身事故と物損事故の違い
「物損事故」とは、物損しか発生していない事故のことです。
たとえばクルマが破損したり、商店や塀、民家やガードレールなどが壊れたりしただけのケースでは物損事故になります。
これに対し、「人身事故」とは、交通事故で被害者がケガをしたり死亡したりした事故のことです。
車が壊れていても、人が傷ついたら人身事故です。
つまり、人の生命や身体に損害が発生したら人身事故、それ以外のケースは物損事故と考えると正しく理解できます。
加害者が物損事故にしたがる理由
物損事故の場合、加害者は免許の点数が加算されません(道路交通法違反がある場合を除く)。
これに対し、人身事故の場合には必ず免許の点数が加算されます。
次に、物損事故にすると、加害者は刑事罰を受けません。
人身事故の場合には、自動車運転危険致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
さらに、物損事故の場合、加害者が支払う賠償金の金額は非常に安くなります。
物損事故の場合、慰謝料は発生しませんし、後遺障害が残ることも死亡することもないので逸失利益も発生せず、車の修理代だけ支払ったら終わり、ということが多いです。
そこで、交通事故後の示談交渉などもすぐに終わります。
以上のように、物損事故にすると、加害者にとっては何かと手間がなくなり、メリットが大きいのです。
そこで、加害者は事故を物損扱いにすることを望むケースが多いです。
物損事故にしたがる加害者はタクシーやトラックの運転手が多い
タクシーやトラックの方は事故慣れしている人だからです。
こうした人の場合、交通事故では人身事故より物損事故の方が加害者にとって得になることを知っているので、物損事故にしたがります。
タクシーやトラック運転手などは、こうした事情に詳しいので、物損事故にしてほしいと言ってくることが多いです。
タクシー会社は交通事故の件数が増えると、従業員の監督義務に関して官公庁から指導を受けたり、内部調査を行われる危険性があります。
許認可に関わることになりますので、「物損事故」ですませて、事故そのものを公に出さず、損害賠償を最小化することもあります。
次に、免許の点数が加算されていて、もう少し点数があがると免停になったり取り消されたりする危険がある人も、物損扱いにしたがります。
こうした人は、人身事故にされると免許がなくなってしまいますが、物損であればそうした措置を免れるからです。
しかし、交通事故を物損扱いにすると、被害者にとっては不利益が大きいので、事故で怪我をしている場合、必ず人身事故として届け出る必要があります。
ケガをした被害者が物損事故によるデメリット
物損事故にすると、相手に請求できる賠償金の金額が非常に少なくなります。
物損事故の場合、相手に請求できるのは、物損のみです。
多くのケースでは、自動車の修理代と衣類の費用を請求出来る程度なので、10万円~20万円前後で終わってしまいます。
さらに、物損事故の場合、警察が作成するのは簡単な物損事故証明書のみです。
交通事故の状況について被害者と加害者との間で争いになることは多いですが、そのような時に事故状況の証明に役立つのが警察の実況見分調書です。
これは、警察が交通事故現場に来て実況見分をすることによって作成される書類です。
しかし物損事故の場合には、警察は実況見分をしないので、実況見分調書が作成されません。
簡単な物件状況報告書しか作成されませんが、これだけでは事故状況の証明として不十分であることが多いです。
そこで、物損事故として届け出ると、加害者と事故状況や過失割合について争いが発生したときに、事故の状況を証明できる資料がなくなってしまうおそれがあります。
以上のように、人身事故を物損事故として届け出ると、被害者にとってはさまざまな不利益があるので、交通事故でケガをしたら必ず人身事故として届け出ることが重要です。
今回はここまでです、次回は物損事故から人身事故に切り替える方法を書いていきます。
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本日も最後までお読みくださりありがとうございました。
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