多くのメジャーリーガーを輩出している
カリブ海の小国・ドミニカ共和国を
日本の医師が訪れ、野球少年に多い関節障害
「野球肘」の発症率を調べたところ、
日本に比べ圧倒的に低かった。
医師は「プロを目指すためには、成長期に体を壊さないことが大切」と、
学童野球における指導方法の見直しを訴えている。
医師は慶友整形外科病院(群馬県館林市)
スポーツ医学センター長の古島弘三さん(47)。
ドミニカは人口約1000万人にもかかわらず、
第3回ワールド・ベースボール・クラシック(2013年)を制した。
古島さんは「学童野球の指導法がいい」との評判を聞き、
今年1月、スポーツドクター2人とドミニカを訪れた。
5カ所の地区でエコー検査機器を使って
小学生から高校生の選手約140人を調査。
その結果、肘の外側の骨と軟骨がぶつかって
破壊される離断性骨軟骨炎の発症率は0%だった。
慶友整形外科病院の検診で発見されるのは3%。
日本の同世代の発症率は2~8%とされている。
さらに、内側の靱帯(じんたい)が引っ張られて
骨の一部がはがれる裂離(れつり)骨折の発症率は、
同病院で35%、日本では30~50%とされるのに対し、
ドミニカは15%だった。
日本では約半数近くの小学生が肘の痛みを経験しており、
世界的にも異常な数値だという。
野球肘は、投球時に肘に過度な負担をかけることで起こる。
日本整形外科学会などによる16年度の調査によると、
中学生の練習日数は7割以上が週に6、7日と答えた上で、
3割以上が土日の練習時間は7時間以上と答えた。
一方、古島さんによると、ドミニカの小中学生の練習は
週5日ほどで1日の練習時間も3時間に満たない。
また「子どもが好きな」バッティングに重点を置き、
日本に比べ投球数も少ない。
ドミニカは「けがをさせないために指導者がいる」という考えで、
「子どもたちがやりたいように自主的に練習し、野球を楽しんでいる」という。
損傷した肘の靱帯の代わりに正常なけんの一部を移植し
固定する手術(トミー・ジョン手術)を約600例手がけた古島さんは
「特に小学生の時は骨が未成熟で運動神経の基礎が伸びる時期。
いかに体に負担をかけずに運動神経を向上させるか、
現場の指導者が正しい知識をもって指導すべきだ」と話している。
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