【水素水を洗い流す】
水素水、水素豊富水に関する研究、
発表は年を追うごとに増えており、
ざっとここ1年間を見てみると、
一週間に一つの研究発表が
行われるほどのペースとなっています。
世界中でそれだけの研究予算が
組まれているという事実の裏には、
半ば確固たる期待があると考えて間違いありません。
常に批判に晒されるアカデミアとは対照的に、
「インターネット」やSNSの世界には、
どのような話題においても、
デマと誤謬が真実を覆い隠すように渦巻いています。
当然ながら、水素水の話題も例に漏れません。
それらを一度に解くことは困難ですので、
基本的なところから少しづつ考えて行きましょう。
まず、メディアで流布されている言説を洗浄します。
そのうえで作用や実態を考えてみます。
1.「水素イオン」に注意
「水素イオン」とは何でしょうか?
水素原子から電子を取り去ったもので、正電荷を持つイオン、
つまり裸のプロトンを指すのでしょうが、
このようなモノは通常、原子核研究所にしかありません。
H⁺は便宜上の想定ですから、
「水素イオン」云々で解説を進めている文章には、
深く理解している人が書いたものと、
商業的なキーワードの羅列でしかないものとがあります。
生体内では大抵の場合、
水素イオンにあたるものは、
ハイドロニウム(H₃O⁺)として動いています。
単独の「水素イオン」が水中に浮遊しているような
イメージを持たないようにしましょう。
2.「活性水素」に注意
エライ先生が、単独の水素原子のことを
「活性水素」と呼んでしまったため混乱を招いています。
通常、水素原子は2個繋がって
水素分子H₂(水素ガス)として存在しています。
このH₂と区別するため、
単独の原子を「活性水素」と呼んだようです。
水素水の効用において、「抗酸化作用」が
頻繁に標榜されますが、
単独の水素原子はラジカルであり、真逆です。
「活性水素」という語は無視した方が良さそうです。
3.「ヒドロキシラジカルの還元力」に注意
水素水には「ヒドロキシラジカルを選択的に還元する」
効能がある、という記述が多く見られます。
水素水における数々の実験から、
ヒドロキシラジカルによるダメージのマーカーが軽減されることは、
独立して何度も報告されています。
しかしだからといって、水素水中の余剰水素原子が
直接的にヒドロキシラジカルを還元するかのような
化学式を添えるのは混乱を招きます。
一般に、体内でヒドロキシラジカルが発生して
消え去るまでの時間(ハーフライフ)は、
1ナノ秒(1秒の百万分の一の千分の一)とされています。
水素水の特徴は、その選択的応答であり、
コヒーレンスにあります。
直接的化学反応では説明がつきません。
4.「水素は水に殆ど溶けない」に注意
室温的な条件下で水素を水に
溶けこませようとすると、
最大で1.6ppm程度になります。
市販されている機器などを用いた場合、
平均すると、その半分程度、
つまり0.8ppm程度の濃度になるというのがコンセンサスです。
ppm とは、パーツ・パー・ミリオンの略で、
分かりやすく言うと、1リットルの水に
1mgという濃度が1ppmになります。
ですから、比較的高価な水素水でも、
1リットルにつき1mgしか水素が
入っていないというイメージが妥当です。
そうすると「水素は水に殆ど溶けない」
という表現は適切に思えますが、
問題は、この事実が「だから効くわけがない」
という理由へと短絡される部分です。
全くの単純計算になりますが、
水素原子1個につき、
フリーラジカルが1個還元されると考えてみましょう。
すると、ビタミンⅭ(アスコルビン酸)1個は
フリーラジカルを2個還元出来るという計算になります。
ビタミンⅭの大きさ(分子量)は
水素原子の約176倍あるため、
同じ重さで考えた場合、水素原子の抗酸化力は、
ビタミンⅭの88倍あると言うことが出来ます。
ところが、ビタミンⅭはラジカルを還元した後、
自らが酸化され、デヒドロアスコルビン酸となってしまいます。
こういったマイナス面を考慮すると、
水素原子の抗酸化力が、
仮に「ビタミンⅭの200倍である」
という研究が出てきても驚きはしません。
たった1ppmの濃度の水素水であっても、
1リットルでビタミンⅭ 数百ミリグラム程度の効能があると考えることは、
少なくとも「トンデモ」や「インチキ」では無いことが分かります。
それを2リットル程度毎日飲んだとするとどうでしょうか?
水素は生命にとって根源的な物質でもあり、
抗酸化力という一面では、
到底語り尽くせない影響があっても不思議ではありません。
5.「アルカリ」「ミネラル」に注意
水素水における効用は
「アルカリイオン」や
「ミネラル」等とは、まったく別のものです。
こういった語と混同しないように気をつけましょう。
【ごく最近の研究発表】
水素水の効用において、
ごく最近の発表を見ただけでも、
恐ろしい程の実験数と目を疑うような効用、
多岐にわたる病態の改善など、
にわかには信じがたい部分もあります。
実験後、解剖して確証を得る意味で、
まだまだ動物実験が多いですが、ざっと挙げてみましょう。
発表年:2017
効果:水素水で紫外線による角膜ダメージを修復
期間:8日ダメージを与えた後、4日治療
水素濃度:0.5ppm 目薬
生成法:マグネシウム製剤
対象:ウサギ
リンク:https://www.nature.com/articles/s41598-017-18334-6
発表年:2017
効果:水素水でアルコール脂肪肝を改善
期間:12週間
水素濃度:0.5~0.6ppm
生成法:マグネシウム・スティック
対象:マウス
ポイント:ピアレビューB(Very Good)
リンク:https://www.wjgnet.com/1007-9327/full/v23/i27/4920.htm
発表年:2017
効果:水素水でタバコによる慢性閉塞性肺疾患を改善
期間:12週間
水素濃度:0.6ppm
対象:ラット
ポイント:中国国費
リンク:http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1535370217725249?journalCode=ebmb
発表年:2017
効果:直腸がん患者で化学療法による肝障害を水素水で低減
期間:約5年半
水素濃度:0.27~0.4ppm
生成法:加圧
対象:144人
リンク:https://www.spandidos-publications.com/10.3892/mco.2017.1409
発表年:2016
効果:水素水でうつを改善
確認:中枢神経の炎症性サイトカイン軽減、活性酸素類軽減
期間:4週間
水素濃度:0.8ppm
対象:マウス
リンク:https://www.nature.com/articles/srep23742
これらの実験に共通する特徴的な事柄を次に挙げてみます。
【一体何が起こっているのか?】
水素水を一定期間飲用することで、
酸化ダメージからくる象徴的な物質の
生成量が低下することは、ほぼ確実です。
しかし水素水の中の水素が
直接ヒドロキシラジカルを
還元するという考え方には無理があります。
それどころか、炎症性サイトカインの低減に始まり、
抗酸化物質をより多く生産するような
遺伝子の変化までが確認されており、
単純なアンチオキシダントとしての還元反応からは、
はるかに遠くかけ離れた、より抜本的な調整が見て取れます。
ありとあらゆる「ホメオスタシス復元」効果が発生しているという印象です。
ホメオスタシス(恒常性)とは、
身体の状態を一定に保つため、
24時間休みなく稼働している機能です。
水素水の効能で特筆すべきは、2点あります。
一つは、直接的な化学反応のタイムフレームや
半減期とは全く別の次元での、
比較的長期的な好影響が見られるという点です。
二つ目は、ヒドロキシラジカルを還元しながら、
酸素ラジカルや一酸化窒素などとは反応しないというような、
一見選択的とも思える現象が起きていることです。
この期に及んでは逆に考えるべきでしょう。
つまり、最初に化学反応的な仮説を持ってきているから、
選択性を備えているかのような帰結が
はみ出してナンセンスに見えるわけですね。
実際に起きていることは、
水素水が身体に対し、適切な処方を促すべく、
的確な情報をもたらしているということです。
このコヒーレンス(首尾一貫した状態)の典型とも言える状況は、
まさに「飲むMRI(磁気共鳴映像法)」という感じがします。
【自然界の効率】
植物がクロロフィルにおいて、
太陽から受け取った光子を反応中枢へと、
全く無駄なく(最短ルートを使って)エネルギーとして移送する様は、
我々人間にとって、永らく驚異の対象となってきました。
今では、正確なメカニズムの解明はさておき、
例えバクテリアのような低次の生物であっても、
量子コンピューター的な計算で
環境に対応していると考えざるを得なくなっています。
有名な実験で、ある種のバクテリアを、
そのバクテリアが消化利用出来ないような物質しか無い環境に置いて、
バクテリアの遺伝子変異を観察したところ、
ランダムな確率論では到底考えられないような、
「進化的」変異が進んでゆくという現象があります。
最近では遺伝子におけるスイッチのオン・オフでさえ、
白か黒かでは無く、確率論的な広がりなのでは無いかと言われています。
今言われている「量子的な適応」とは、
あらゆるパターンの「現実」を同時に経験しながら、
その中で最適な化学反応なり、
変異なりを採用して行くという、
ずるいメカニズムを指します。
一方、全ての生命を貫く共通項が、
最小の原子である水素原子を中心として
構築されていることは間違いありません。
人体を構成する分子数にして、その99%以上は水が占めます。
体内で水は多重のクラスター構造を造り、
自由度を増した水素原子核は、グロータス機構や
量子トンネル効果と称されるような
「広がり」を持っています。
その重ね合わせの部分で、
全身がお互いに交信し合っているようなイメージがあります。
本日も最後までお読みくださりありがとうございました。