「無料でチョコレート・ケーキか温野菜が選べます。どちらにしますか?」
と言われた場合、皆様はどちらを選択しますか?
またその理由は何でしょうか?
■ 警鐘は聞こえない
砂糖が身体に悪いと言われ、
炭水化物の摂りすぎが
身体に悪いと言われてから久しいです。
砂糖の害悪や、砂糖が
身体を蝕むメカニズムを
説いたコラムや本は
枚挙にいとまがありません。
私もそれらのほとんど
全てに賛同していると思います。
しかし、これだけ警鐘が鳴らされても
肥満や糖尿病や癌は
増加の一途をたどっています。
糖尿病は最新の厚生労働省の発表では、
患者数が316万6千人(日本のみ)。
3年間で46万人以上も
患者が増えたことになります。
もちろん過去最高です。
こういうデータを見るにつけ、
砂糖の害悪を訴えたり、
低炭水化物食を奨励することに、
果たして意味があるのだろうか?
と思ってしまいます。
少なくとも、
糖尿病患者数を減少に向かわせるほどの
効果が無いことは明らかです。
一般に、健康知識を啓蒙することに
意味や意義があるか?
と言われれば、
それは大いにあると言わねばならないでしょう。
しかし、正しい知識を広めることで
糖尿病が抑えられるか?
というと、現状では NO です。
何故これほどまでに知識は無力なのでしょうか?
■ 修復は不可能
国全体など、大局で見た場合、
端的に言って、
正しい知識を広めることで
糖質摂取を制限
させることは不可能です。
何故なら、生化学的に納得できる
知識を得たからといって、
それをすぐ生活にあてはめられる
人間はごく一部だからです。
これは例えば、
「糖質が身体に悪い」ということを
理解できる人が少ないという
ことでは決してありません。
むしろほとんどの人が
そのことを理解できるでしょう。
言ってはいけない核心を言います。
糖質制限に限らず、
生活習慣病は、
心理学・行動学の分野であって、
そこが放ったらかしなのですから
現実は変わらないということです。
分かりやすく言うと、
「無料でチョコレート・ケーキか温野菜が選べます。どちらにしますか?」
と言われた場合、
人々はどちらを選択するのか?
またその理由は何なのか?
ということです。
そして、人々がチョコレート・ケーキを
選ぶと分かった場合、
その方向に経済が発展し、
負の連鎖が助長されていきます。
■ 理性 vs 快感
糖質は、脳の側坐核(そくざかく)と
いわれる部分を有効に刺激します。
側坐核が刺激されると、
「脳内麻薬」である
ドーパミンやセロトニンが放出され、
達成感や幸福感にも
似た快感が貴方を包みます。
つまり、糖質を摂ることで、
かなり手軽に大きな
報酬が得られるわけです。
人間を含む多くの動物のシステムは、
報酬の記憶を脳にしっかり刷り込み、
それをいかに再現するかということを
志向するように出来上がっています。
報酬をもたらす行為は
繰り返し行われますが、
そのうち、受容体の
ダウンレギュレーションが起こり、
同じ量の糖質では十分な
快感が得られなくなってきます。
それがさらに糖質摂取量の
増加をもたらしてゆきます。
これはちょうどコカイン依存症などと
同じメカニズムであり、
食事を超越した、
ある種のドラッグ的薬効が
糖質にはあるということです。
我々は、行為→報酬→リピート
というサイクルで
習慣的に生きているため、
これを断ち切るのは
容易ではありません。
不可能な場合も多くあるでしょう。
先の、チョコレート・ケーキか温野菜か、
という選択において、
糖質の固まりである
チョコレート・ケーキは
側坐核からの報酬を
即座にもたらしますが、
温野菜は血糖値を上げないため
体感的な報酬はありません。
糖質がどのように身体を蝕むか
という次元の話では無いのです。
体感報酬をもたらす選択
vs
体感報酬をもたらさない選択
の2択に直面した場合、
我々動物は、
どこまで理性的に行動をとれるのか?
という問題です。
人間はそれほど、
理性的な判断を下したり、
理性的な行動をとったり
出来るものではありません。
だから啓蒙もあまり効果が無いわけです。
ここで興味深い別の研究を重ね合わせていきます。
■ 京都大学の研究
先ほど、糖質は脳の側坐核を
有効に刺激して、大きな快感を
もたらすことを紹介しました。
非常に面白いことに、
京都大学の有名な実験で、
何らかの報酬を期待する際、
この側坐核の興奮度が高い人ほど、
「嘘つき」であるということが分かっているのです。
側坐核の興奮度が高いということは、
報酬への欲求が強いことを意味します。
同じ報酬に対し、側坐核が強く反応する人は、
欲求に負けるためモラルが低くなるようです。
■ 裏切者はシェイプで分かる?
京都大学の研究が示唆するところは大きいですね。
ただし、実生活に置き換えてみると、
報酬への欲求の「強さ」は測りにくいので、
報酬をどれだけ早く欲しているか
ということのほうが使える物差しになります。
一般に、行為から報酬までの時間が短いほど、
より多くの人に好まれる傾向にありますが、
それが顕著な場合は、
刹那的志向とモラルの低下が危惧されます。
アメリカでは、
身体のシェイプが良い人は、
自己管理に長けていると判断され、
会社への採用時にも有効です。
食事面で自分を律することが出来る人は、
理性と欲求の戦いになった場合でも、
理性主導で判断し行動出来る
のではないかという期待です。
そう考えると、
成人病や生活習慣病への取り組みは、
人格形成がカギということになります。
また、食生活がだらし無い人を
あっさり信用しないようにしましょう。(笑)
本日も最後までお読みくださりありがとうございました。