最新の睡眠科学|必ず眠れるとっておきの秘訣!(纏め)

必ず眠れるとっておきの秘訣!

◆眠りの科学は俗説だらけ?

・90分の倍数の睡眠時間をとれば、目覚めがよい。

・22時から深夜2時までが睡眠のゴールデンタイム。

・7時間睡眠が寿命を延ばす。

 

「知ってる、知ってる」とうなずく人が大半なのかもしれません。

しかし、実はこれらすべて間違い、もしくは不正確な「睡眠神話」です。

 

必ず眠れる睡眠法は、

・眠りへのこだわりを捨てる

ことを基本に据えた、ごくシンプルな方法です。

 

(1)睡眠システムと覚醒システムは互いに抑制しあっており、優勢なほうに切り替わるようになっていて、この切り替えに影響するのが、体内時計と、睡眠負債という概念です。
加えて、覚醒を促す要素としてストレスや情動があります。

 

(2) 眠りを意識しすぎると、その情動によって覚醒が促されてしまうので、眠りにこだわりすぎないことが安眠へつながります。

 

(3) 寝ないといけないと意気込まず、寝室で15分眠れなかったら居間にいったん戻り、眠気を感じたら寝室に行く、というふうにするとよいです。

◆巷にあふれる睡眠神話 その❶

◇「睡眠は90分周期」

睡眠にまつわる話の中には、

根拠が乏しいのに

多くの人が信じている、

「睡眠神話」と呼ぶ

べきようなものがあります。

 

そのうちのひとつが、

「睡眠のサイクルは90分周期である」

というものです。

 

睡眠の状態として、

「ノンレム睡眠」と

「レム睡眠」があることは

よく知られていますが、

 

眠っているときには、

この2種類の状態が規則正しく交互に繰り返されます。

 

繰り返しの1単位が

「ノンレム睡眠+レム睡眠」であり、

それが90分だというのが、

「90分周期」という

俗説の根拠となっています。

 

 

しかし、実は、

「ノンレム睡眠+レム睡眠」にかかる時間には

個人差があり、また日によっても変わってきます。

 

それは、

1時間以内のこともあれば

120分のこともあるということが

わかってきました。

◆巷にあふれる睡眠神話 その❷

◇ノンレム睡眠とレム睡眠が、それぞれ深い眠りと浅い眠りである。

ノンレム睡眠とレム睡眠の

それぞれの状態は、

質的に全く異なるもので、

 

ノンレム睡眠の間は

脳の活動が低下しており、

その為、

筋肉の活動も低下しています。

 

自律神経は

副交感神経が優位になっているので、

心拍数や血圧や、呼吸数も下がっています。

 

 

一方で、

レム睡眠のあいだ、

脳は覚醒しているとき以上に

強く活動しています。

 

自律神経も

激しく変動しているが、

身体が暴走しないように

神経系や感覚系は

完全に遮断されています。

 

その為、こちらは金縛りのように

身体に力が入らない状態となっています。

 

ノンレム睡眠とレム睡眠が、

それぞれ深い眠りと浅い眠りだという言い方も

間違っているということです。

◆巷にあふれる睡眠神話 その❸

◇22時から深夜2時までが睡眠のゴールデンタイムである。

よく

「22時から深夜2時までが睡眠のゴールデンタイム」であり、

その間に

「成長ホルモンが活発に分泌される」から、

 

ゴールデンタイムにきちんと眠ろと言われます。

こちらも根拠がない睡眠神話です。

 

成長ホルモンが

睡眠中に分泌されるのは確かですが、

それは特定の時間に起こることではなく、

 

就寝後

最初にあらわれる

ノンレム睡眠の時に起こります。

 

睡眠中、

「ノンレム睡眠+レム睡眠」の組み合わせは

4~5回繰り返されますが、

 

そのうちで

一番深いノンレム睡眠があらわれるのが、

就寝後最初のサイクルです。

 

 

その時に成長ホルモンが分泌されるので、

「何時に寝るか」は実はあまり関係がありません。
要は深いノンレム睡眠に入れるかどうかなのです

 

大切なのは寝る時間帯ではありません。

 

睡眠に「ゴールデンタイム」はないということです。

◆睡眠をつくりだす脳、覚醒をつくりだす脳 その❶

◇なぜ夜眠くなって、朝起きるのか?

 

私たちは、朝起きて、夜眠くなる。

このことには、2つの要素がかかわっています。

 

一つは、「概日時計」つまり体内時計です。

 

24時間ぴったりの周期ではないが、

おおむね1日周期で、

昼夜で覚醒の出力を調整するリズムを刻んでいます。

 

 

もう一つは「睡眠負債」です。

 

これは一種の考え方で、

起きている時間が続くにつれて

脳内になにかが溜まっていって、

 

睡眠をとると

それが解消されるという概念です。

 

睡眠物質の存在について

研究が進められていますが、

 

今のところその正体については

明らかになっておらず、

 

物質が存在するにしても

ひとつの物質では説明できない

ということがわかってきています。

◆睡眠をつくりだす脳、覚醒をつくりだす脳 その❷

◇脳内のシステム

「概日時計」と「睡眠負債」が

睡眠と覚醒に影響を与えているとして、

 

そのとき脳ではどのようなシステムが働いているのだろうか?

 

 

睡眠にかかわるのが「視床下部」という領域です。

 

視床下部は4グラム程度しかない、

ごく小さい領域ですが、

自律神経系の中枢であり、

様々なホルモンの分泌をコントロールしています。

 

視床下部の前のほうにある

「視索前野」では、

睡眠中に、神経細胞から

「GABA」という抑制系の

神経伝達物質をつくっています。

 

その物質が覚醒にかかわる領域を抑制する為、

睡眠という状態が作りだされます。

 

 

一方、覚醒にかかわる領域が、

視床下部と隣り合う「脳幹」です。

 

 

脳幹は、

呼吸や血液循環などを統制する中枢であり、

生命維持を司ります。

 

この中の、

「脳幹網様体」という部分には神経細胞が集合しており、

ここから脳全体へさまざまな命令が出されています。

 

そのなかで、

「モノアミン」や「アセチルコリン」といった

神経伝達物質を介した命令は、

覚醒状態をつくりだしながら、

睡眠にかかわる領域を抑制しています。

 

 

睡眠システムと覚醒システムは、

お互いに抑制しあっており、

どちらかが優勢になると

スイッチがパチンと切り替わるという関係です。

 

そして、

覚醒を適切に維持するための脳内物質が、

オレキシンという物質です。

◆睡眠をつくりだす脳、覚醒をつくりだす脳 その❸

◇時間帯や状態によって眠れないときがある

体内時計の時刻に合わせて、

身体は

体温や血圧、ホルモン濃度などを

調整しています。

 

 

前述のオレキシンも、

体内時計の情報を受け、

朝に活発になります。

 

ただ、

この体内時計を元にした、

覚醒の為の身体の出力は、

 

単純に

昼にピークがあって

夜に下がるというものではありません。

 

 

午後2~3時ごろは

一時的に出力が下がり、

毎日の就寝時間の前にはぐんと上がり、

寝る直前から急に下がります。

 

 

意外なことだが、

就寝数時間前は、

眠くならない時間帯なのです。

 

 

これは、おそらく、

就寝時間に向けてどんどん増えている

睡眠負債を抑える為に、

覚醒の為の出力が

上がるのだと考えられています。

 

 

しかし、こうした時間帯に関係なく、

授業中に眠くなったり、

夜中に見たい番組があれば

起きることができたりします。

 

 

これは、モチベーションや

気持ちの高ぶり、

ストレスによる興奮などが、

 

脳幹の覚醒にかかわる機能や、

オレキシンをつくる神経細胞に影響するからです。

 

また、満腹と空腹の場合の血糖値の違いは、

オレキシンの生成に影響する為、

栄養状態も覚醒に大きくかかわるといえます。

 

 

このように、睡眠と覚醒には

、体内時計と睡眠負債に加え、

 

・モチベーション

・情動

・ストレス

・栄養状態

 

も関係しています。

 

 

「何か気になることがあって眠れない」

というのは自然なことです。

 

というのは、前述したとおり、

感情の高ぶりやストレスが、

脳に作用して覚醒状態をつくるからです。

 

この場合、眠れるようになるには、

ストレスや不安の元になっているものを

解決するしかありません。

 

 

以上をふまえると、

逆説的に、眠りにこだわりを持たなければ、

不眠恐怖をつくらないで済みます。

 

 

「睡眠をとらないとうまくいかない」とか

「特定の時間に眠らなければ」という

思い込みをなるべく排し、

眠りに関心を向けすぎないことが安眠への第一歩です。

◆睡眠をつくりだす脳、覚醒をつくりだす脳 その❹

◇15分眠れなかったら居間に戻る

不眠に陥るのを避ける為には、

寝室で眠れない体験を

繰り返さないようにするのが大切です。

 

だからこそ、

眠くてしょうがなくなるまで

寝室には行かず、

 

また、寝室で15分眠れなかったら

居間に戻ってみるとよいです。

 

寝つけないのに寝ようとすると、

情動が高まって、

身体が覚醒状態に向かってしまいます。

 

 

「寝ないといけない」と意気込まず、

眠くなったら寝室に行く、

15分眠れなかったら居間に戻る、

ということを淡々と繰り返します。

 

すると、

眠気は溜まっているはずなので、

最終的には必ず眠れます。

 

 

ワンルームに住んでいる人は、

「寝室」を「寝床」と考えて、

同じように15分眠れなかったら

寝床を離れるというふうにすれば大丈夫です。

◆睡眠をつくりだす脳、覚醒をつくりだす脳 その❺

◇必要以上に早く寝ようとしない

スムーズに眠りにつく為には、

「いつ寝るか」も大切です。

 

体内時計のくだりで述べたように、

夕方から夜にかけて、

人間には「眠れない時間帯」があります。

 

溜まってくる睡眠負債に対抗するために、

覚醒出力が上がる時間帯です。

 

 

例えば、夜11時に寝る人ならば、

直前の8時から10時くらいにかけては、

一日で一番眠れない時間帯です。

 

これは「睡眠禁止帯」と呼ばれています。

 

その為、

翌朝早く起きなければいけないという場合に、

早めに寝ようとすると

寝つけなくなってしまいます。

 

睡眠禁止帯にあたってしまうからです。

 

翌朝早く起きる必要がある時にも、

普段どおりの時間に寝て、

次の日の睡眠で睡眠不足を解消するのがよいです。

 

 

また、睡眠禁止帯は、

夜に明るい光を浴びると後ろにずれてしまいます。

 

体内時計そのものが

光によって後ろにずれこむからです。

 

そうすると、

いつも寝る時間が

睡眠時間帯に入ってしまって眠れなくなります。

 

 

睡眠に悩んでいる人は、

夕方以降明るい光を浴びるのは避けたほうがよいでしょう。

◆眠りのギモン その❶

◇忙しくて寝る時間が取れないときにはどうすれば?

OECDの調査によると、

日本人は世界で2番目に

睡眠時間が短い国だそうです。

 

一律、何時間眠れば健康ということはなく、

一人ひとり最適な睡眠時間があるものですが、

 

それよりも短い睡眠時間で

やりくりしている人は多くいることでしょう。

 

短い睡眠時間に慣れるという人もいるが、

残念ながら、短時間睡眠が習慣になったとしても

脳や身体が慣れるということはありません。

 

 

夜間の睡眠時間を

一定の時間に制限して反応速度を観察する実験でも、

日を追うごとに反応は遅くなるだけで、

慣れるという現象は起こらなかったといいます。

 

 

したがって、

7時間睡眠が必要な人は、

十分なパフォーマンスをするには

7時間寝るしかありません。

 

 

休日にリズムを崩さないよう

「プラス30分以内」に多く寝るか、

平日のすき間の時間で

短い睡眠をとるしかありません。

 

 

足りない睡眠は

別のなにかで代用することはできません。

 

 

「夜に眠れなくて日中に障害がある」ということが

週3回以上、3ヵ月以上続くと、

臨床上「不眠」と診断されます。

 

 

眠れない原因が解消されているのに、

不眠が続いてしまうのは、

「眠れない」ということ自体に

意識が向いてしまうからです。

 

 

毎日同じ寝室で

「眠れない」苦痛を味わうと、

いつの間にか寝室と苦痛な体験が結びつき、

無意識に操作されて

ますます眠れなくなってしまうのです。

◆眠りのギモン その❷

◇シフトワーカーは不眠になりやすい?

現代人の眠りの特徴のひとつとして、

仕事の都合で生活リズムが

不規則な人も多いということがあります。

 

 

体内時計によって

いろいろな機能が低下している夜に働くというのは、

本来は良くない事ですが、

シフトワーカーを続けていても

普通に生活できているのなら、

心配はいりません。

 

日中の活動に支障がないのなら、

睡眠は十分にとれているということです。

 

多くの動物は、

まとめて夜眠るのでなく、

寝たり起きたりしています。

 

 

人間も、

大昔は今とは違って

まとめて眠るスタイルでは

なかったかもしれません。

 

 

だから、

シフトワーカーの人は、

多少負担があるとしても

生体として適応する能力があるのだといえます。

 

したがって、

普通に生活できているとしたら問題はありません。

 

ただ、シフトワーカーの人には

一方で不眠症やうつ病が多いことも知られており、

そうなってしまった場合は働き方を変えることです。

参考文献:櫻井武「最新の睡眠科学が証明する 必ず眠れるとっておきの秘訣!」

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