目次
〇 テーピングの基本
〇 テーピングとは?
〇 キネシオテープ
〇 テーピングを貼るうえで注意すること
〇 テーピング関連商品
テーピングの基本
テーピングとは
テーピングテープは、「布」に「糊:のり」を接着させたものです。
布にはたくさんの素材があり、大きく分けると伸縮するタイプと伸縮しないタイプに分かれます。
いわゆる粘着剤である「糊」の改良や、基材である布の進化はありますが、テーピングが自ら発熱したり、冷却するような機能はありませんし、シップのように薬も入っていませんので、貼っているだけで痛みが改善することはありません。
世の中には〇〇テーピングと称して、魔法のテープのような誇大広告のようなものもたくさん存在しますが、決して間違えないようにしてください。
テーピングの目的
テーピングの目的は、制動・固定が基本になります。
関節をまたいで、テープを貼付することで、痛い方向への運動をテーピングで制動・固定します。
主な使い方としては、
①応急処置としての使用
②傷害の予防
③再発予防
④パフォーマンスアップ、フォーム改善
となります。
テーピングの幅について
テーピングの幅はメーカーによって数ミリ単位の表示は異なりますが、ほぼ12mm~75mm幅となっています。
同じ基材(布材)でも6種類も存在することになります。
幅が細いテーピングは指用、広いテーピングは背中や太ももに貼付するのが便利です。
簡単に目安を示します。
12mm ⇒ 手や足の指など
19mm ⇒ 手や足の指など
25mm ⇒ 手や足の指、手の関節、足のアーチなど
38mm ⇒ 足や手の関節、ヒザ、アキレス腱、下腿(ふくらはぎ)部など
50mm ⇒ 大腿部、腰、肩など
75mm ⇒ 大腿部、背中など
テーピングの強度
伸び縮みするか、非伸縮かで大別できます。
非伸縮タイプのテーピングは、強度が強く、伸縮するタイプは強度が弱くなるのが一般的です。
強固な固定力を求める場合は、非伸縮タイプを選んで下さい。
部位にもよりますが、テーピング幅も広い方が強度が強くなります。
テーピングの引っ張り強度は一般的には公開されていません。
ただ、メーカーによって異なるため、同じ幅、同じ非伸縮テーピングでも、強度が異なる可能性があります。
非伸縮タイプ
主にコットン材を使用しております。
足関節捻挫など強固に関節を固定したいときに使用します。
伸縮タイプ
非伸縮タイプに比べると、強度は落ちます。
強度を見分ける簡単なポイントしては、手で切れるか、切れないかで判別できます。
手で切れる場合は強度が弱く、手で切れずハサミが必要な場合は強度が強いです。
近年テーピングが機能的に進化してきており、さらに細かく分類され使い分けることができようにもなってきてます。
撥水、防水テーピング
元来テーピングは、布の基材に粘着剤をつけたものです。
そのため、雨など水がかかると、すぐに剥がれてしまうという弱点がありました。
それを補うために、基材に「撥水機能」を持たせたテーピングが出てきました。
サッカーやラグビーなど、雨など関係なく行うフィールド競技などでは重宝する機能かと思います。
もちろん生活防水(水道の水がかかる)などでも機能を発揮します。
※体内から発する汗に関しては、撥水加工をしていても剥がれやすくなります。
さらに、完全防水テーピングも開発されています。
従来の布基材ではないため、一慨には比較できませんが、水中で動くようなスポーツには有効でしょう。
※競泳などテーピングが禁止されている競技には使用の注意が必要です。
一方、各メーカーはあまり述べていませんが、基材表面に撥水コーティーングがされているため、基材面上に接着する(テーピングの上にテーピングを接着させる)と剥がれやすい可能性があります。
また、撥水コーティングが通気性を どの程度犠牲にしているのか不明です。
通気性が悪くなると、ムレが生じ、かぶれなどの原因になります。
安易に撥水加工を選ぶのではなく、用途に応じて使い分けましょう。
メーカーによっては、そのままお風呂に入っても良いと説明しています。
ただ、特殊な理論テーピングを除き、基本的には「寝ている時にテーピング効果を発揮することはほぼない」と言えますので、お風呂に入った際には、テーピングを剥がしましょう。
皮膚トラブル
皮膚に直接貼付するテーピングでは、皮膚トラブルを生じる可能性があります。
各メーカーは、通気性や粘着剤を工夫し、皮膚トラブルを生じないよう工夫しています。
テープを剥がすときには、皮膚の表面の角質層の一部がいっしょに剥がれてしまい、肌が赤くはれたり、かぶれるといったトラブルが起こります。
特に乾燥肌の方や高齢者、赤ちゃんには注意が必要です。
テーピングを剥がすテクニック、前処置、それに付随するスプレー用品など各メーカーが工夫しています。
テープかぶれしやすい人や長時間貼付する場合には、皮膚に優しいと謳っている商品の購入がおススメです。
自着式テーピング
いわゆるバンテージと言われ、テーピング通しで くっつく機能があります。
数回の巻き直しも可能であり、直接粘着剤で肌に貼付するタイプに比べ、皮膚トラブルも少ないとされています。
手で切れるタイプが多く、操作性も抜群です。
制動固定力は低めですが、テーピング初心者には扱いやすいテーピングです。
「ラップ巻き」といって、痛みのある関節や筋肉をぐるぐる巻きにすれば、ある程度痛みが軽減することが可能です。
ただ、テーピングの本質を学び、必要最低限のテーピングで結果を出せるようになれば、ほとんど使用する機会がなくなるでしょう。
テーピング肢位
テーピング肢位とは、テーピングを巻くときの ポジションです。
例えば、捻挫に対するテーピングでしたら、巻き始めを少し捻挫した方向と逆方向の肢位をとってもらいます。
そうすれば制動力は増し、テーピングのテンションに依存する量が減り、違和感も少なくなります。
また痛みが出る場合も同じで、痛みが出る直前の位置を確認し、その肢位までに制御するようにテーピングを貼付します。
テーピング肢位の基本
☆痛みが出る逆の方向、痛めた逆の肢位から貼付し始める。
☆筋肉に貼付する際は、最大収縮をさせておく。
テーピングの禁忌事項
テーピングを貼付するにあたり、以下の場合は、注意が必要なため、貼付は避けてください。
どうしても貼付したい場合は、その分野の医師に相談ください。
1.皮膚疾患のある方
2.皮膚障害(傷,化膿)がある部位
3.新生児,乳幼児
4.抗がん剤,放射線治療中の方
5.重度の動脈血行障害,うっ血性心不全の方
6.皮膚移植後の方
7.知覚・感覚障害の方
8.糖尿病の方(医師の許可があったほうが望ましい)
9.皮膚アレルギー,過敏症の方
10.重度の急性外傷,強い疼痛がある方
11.その他、医師がテーピング使用を適切でないと判断した場合
最後に、セルフテーピングする場合のアドバイスを
テープ選びのポイント
伸びる素材か伸びない素材か?
選ぶ際には、「伸びる」タイプをお選びください。
伸びないタイプは、固定力がありますが、「しわ」になりやすく、一般の方には不向きです。
テープ幅の選び方は?
汎用性が高いのは、
テープの幅は、伸びるタイプであれば50mm。
もし伸びないタイプがどうしても必要であれば38mm。
〇撥水加工の有無
⇒雨の中で競技する人はあったほうが良いですが、それ以外の方は、かぶれれすいので撥水加工無しを選びましょう。
〇剥離紙の有無
⇒あったほうが良いです。
後ろに5cm幅に印がありますので、それを参考にカットしましょう。
剥離紙があることで、基材を守ることができます。
事前にテープをカットして使いましょう。
〇アンダーラップについて
コットンタイプを使用する際は、皮膚の保護で使用しましょう。
キネシオロジータイプの場合は、直接肌に貼るため、使用しません。
テーピングとは?
テーピングの歴史の詳細は不明ですが、約150-200年前から行われていたと言われています。
その当時は世界大戦中であり、傷ついた兵士たちにテーピングをぐるぐる巻きにし、固定したのが起源だといわれています。
150-200年もの前、そして戦争(銃弾?爆撃?)で傷ついた兵士の関節をテーピングで固定することで、除痛でき、動けたということは驚きです。
テーピングの効果を先祖の方たちは、経験的に感じ、実践していたのでしょうか。
テーピングの奥深さを感じます。
戦争の映画を見ても、傷ついた兵士に何かしらの固定(包帯や添木?今でいうシーネのようなもの)をしているシーンを見かけることがありますね。
スポーツテーピングの誕生
テーピングのグルグル巻き固定という概念をスポーツ分野で応用され、近年に至ります。
スポーツではアメリカンフットボールが始まりで、現在なお、アメフトの分野ではテーピングを用いられることが多々あります。
これが現在も続く「テーピング=スポーツ」というイメージの根源かもしれません。
アメリカンフットボールはその名の通りアメリカで盛んに行われている競技ですので、テーピングもアメリカは先進国と言えます。
アメリカでスポーツテーピングが確立され、日本に紹介されたのは1900年代の後半とされています。
大手テーピングメーカーである「ニチバン株式会社」は、1981年に一部上場企業としては初のテーピング販売を始めたそうです。
日本に急速にテーピングが広まったのもこの頃からです。
テーピングの始まりは、はるか昔ですが、日本のスポーツ分野で広まったのは、まだまだ最近ということになります。
リハビリテーションの分野ではこのスポーツテーピングの利点を生かし、固定という欠点を補った、ファンクショナルテーピングというのが考案されました。
当時のテーピングの主たる目的としては、関節固定によって患部を安静にすることでした。
しかしスポーツ動作では関節を固定してしまうと、パフォーマンスを低下させてしまいます。
現在では当たり前の考え方となっていますが、1998年に発表されたファンクショナルテーピングは必要な関節運動のみ制限し、可能な限り自然な関節の動きを可能にするよう、当時では画期的な考え方でした。
本法は、理学療法士である川野哲英先生が考案し、理学療法士の携わるスポーツ現場ではテーピングの基礎として現在も行われております。
キネシオテーピング・スパイラルテーピングの誕生
またカイロプラクティックの分野では痛みに対する画期的なテーピング、キネシオテーピングが生まれました。
毛細血管、毛細リンパ管を流れる体液をスムーズにし、筋肉のアンバランスを改善するというものです。
加瀬建造先生が考案したテーピングは接骨院などの治療場面では主流であり、今や世界的に広まっております。
リンパ液の流れを客観的に評価するのは難しいですが、「テーピングを貼付することで、皮膚を持ち上げ、リンパ管やリンパ節へのストレスを軽減する」という理論は分かりやすいです。
また、固有感覚受容器を粘着刺激していること、皮膚の持ち上げによる皮膚可動性の改善など、本来のキネシオテーピング理論とは異なる部分で効果を発揮している可能性があります。
1990年代には、田中信孝先生が、東洋医学の徒手療法から考えたスパイラルテーピングが一世風靡し、駅伝、マラソン選手や高校野球など幅広く広まりました。
格子状のテーピングを痛みと関連ある違う場所に貼付するもので、針灸の代用が可能といわれております。
生活テーピングの誕生
2000年に入ると、数々の簡易テーピングが各メーカーから販売され、手軽に巻けるテーピングが広まりました。
中でもニチバン株式会社の齋藤隆正先生が考案したセラポアは別名「生活テーピング」とも言われ、スポーツ選手のみならず、高齢者でも簡単に効果があるテーピングといわれております。
さらにKTテーピングが2008年に販売されました。
2008年の発売からわずか6年で、米国のキネシオロジーテーピング売上1位を達成し、世界で初めて合成繊維100%を使用したその機能性が日本を含め世界70カ国以上で愛用されています(KTテーピングHPより)。
カラフルなテーピングが好評で、チームカラーに合わせて貼付したり,テーピング自体に名前やロゴを入れるなど、テーピングの概念を変えました。
キネシオテープ
テーピングの目的は、制動固定が基本になります。
主な使い方としては、
①応急処置としての使用
②傷害の予防
③再発予防(リハビリテーション)
④パフォーマンスアップ、フォーム改善
ですが、本日は疼痛緩和と筋肉のサポート目的で使用する伸縮性のテーピングでありますキネシオテープについてお話しします。
キネシオテープは、加瀬建造先生が考案したテーピング技術であり、接骨院などの治療場面では主流になり、今や世界的に広まっております。
毛細血管、毛細リンパ管を流れる体液をスムーズにし、筋肉のアンバランスを改善するというものです。
リンパ液の流れを客観的に評価するのは難しいですが、「テーピングを貼付することで、皮膚を持ち上げ、リンパ管やリンパ節へのストレスを軽減する」という理論は分かりやすく世界中で支持されています。
また、固有感覚受容器を粘着刺激していること、皮膚の持ち上げによる皮膚可動性の改善など、本来のキネシオテーピング理論とは異なる部分で効果を発揮しています。
肌に貼る面には、ノリがある部分とそうでない所が交互に織り込まれています。
筋肉が縮んだ時にノリがある部分が皮膚を引っ張り上げてくれます。
この時に筋肉と皮膚の間に隙間が出来て血管が広がりやすくなり、血液の循環が良くなります。
筋肉の痛みを緩和させるためには、血液循環は必ず必要になってきますので急な痛みにはテーピングはとても効果的なのです。
ギックリ腰や五十肩の様な症状でお困りのかたには特に効果的とも言えるでしょう。
キネシオテーピングを筋肉に沿って貼りますと、その筋肉の補助の機能をしてくれます。
ふとももやふくらはぎの筋肉の補助もしてくれますので、あるいていて痛い方や長距離を走る方の筋肉のサポートとしても効果的です。
更に、外反母趾や、手首の腱鞘炎、中高生にみられるオスグッド病にもテーピングを施す事で筋肉の補助や可動域の制限が出来るようになります。
もちろん突き指の処置や足首の捻挫予防でも使えますので、そのような症状でお困りの方はお気軽にご相談ください。
テーピングを貼るうえで注意すること
テーピングの注意事項
基本的にはさほど副作用などありませんが、いくつかの注意事項があります。
せっかくテーピングを貼付したのに、全く効果がなかったり、逆効果になってしまうことがあります。
テーピングは非常に簡単ですぐに結果が出ますが、注意事項を守りながら行ってください。
テーピングには、品質保証期限というものが存在しております。
パッケージなどでご確認下さい。
テーピングメーカー曰く、高温多湿を避け、一定の環境で保存していれば、何十年経過しても品質に問題ないというものだそうです。
ただ、実際は、冬場の乾燥や、夏場の高温多湿になる環境での保存になることが多く、特に梅雨時期はテーピングの品質が損なわれることがあるので注意が必要です。
安いからと言って、大量買いした結果、使えないということにならないよう注意して下さいね。
横置きが原則
多くの商品は、ロールにテープが巻かれている仕様になっています。
テープが巻かれているテンションは一定のため、テーピングに不要な圧がかかると、テンションが崩れ、巻く際に不都合が生じます。
テープを引き出す際に、いわゆる「引っかかったような状態」となり、これだけで、巻くスピードが落ちてしまいます。
そして,もっと重要な事は、テーピングのテンションが崩れることで、皮膚に貼付する際に、「しわ」を生み出し、それが「かぶれ」につながってしまう恐れがあります。
かぶれは,テーピングの最大の弱点であります。
テープかぶれを引き起こすと修復するまで、しばらく貼付できません。
免疫の低下した高齢者の場合、そこから菌が入り感染してしまう恐れもあります。
横置きで保存するという、ちょっとしたことが、後々貼付の際にも影響がありますので注意しましょう。
温度・湿度
高温多湿の場合、テーピングの品質が損なわれる恐れがあります。
特に粘着剤への影響は大きく、ネバつきなどを生じる可能性があります。
大量買いした場合、置き場所に困ることもありますが、なるべく一定の気温、湿度で保管できる場所がおすすめです。
間違っても、車のトランクなどで保存しないようにしてください。
未開封であれば,出荷時の状態を維持しやすいですが、一度開封すると大きく影響を受けます。
その場合、食品保存用袋のようなもので密封していれば、比較的環境の変化からの影響が少なくなります。
パッケージやカバー保護材を利用
パッケージを開封した後、そのパッケージに戻し保存することをおすすめします。
テーピングの型崩れの防止や密封をしっかりすれば環境変化からの影響も軽減できます。
また、テーピングのロール(芯)の形に合わせて、保護材がついている商品があります。
保護材はテーピングを守ってくれる役目をしているため、途中使用でもそれに収めて保管しておくことをおすすめします。
パッケージ同様に型崩れを防ぎ、さらには「横置き」しやすくなるため、大変便利です。
テーピングは横置きが原則ですが,同じ方向を下にしておくと,粘着剤でベタツクこともあります。
その場合でも保護材があれば,ベタツキを最小限に抑えることがあります。
テーピング貼付時の注意事項 ①
テーピングを貼付する前
テーピング貼付部位を必ずチェックして下さい。
皮膚に傷がある場合には使用できません。
また過度な乾燥肌の方にも貼付は注意が必要です。
テーピングを剥がす際に角質ごと剥がしてしまい、皮膚トラブルを招く恐れがあります。
次世代テープとして、ハイドロゲル(水ゲル)を用いたテープが開発されています。
これは乾燥肌の方にもある程度貼付することが可能と言われています。
過度な腫れがある場合も注意が必要です。
テーピングを巻きすぎて血流が損なわれる可能性もあります.
テーピング貼付後
テーピングを貼付した後、必ずチェックしていただきたいポイントがいくつかあります。
それを怠ると取り返しのつかない事態にもなりかねません。
シワの有無
貼付後シワができていなかチェックする必要があります。
シワができると強度が落ちたり、かぶれの原因にもなります。
また足底にシワができると靴の中に石ころが入っているような状態となり、非常に違和感を覚えます。
シワがあれば面倒でもやり直すくらいの気持ちが大事です。
上からシワを消しても意味がありません。
血行状態のチェック
テープのテンションが必要以上に強く、血管を圧迫してしまうと血流が悪くなります。
その状態が続くと、痛みや冷感、皮膚の色の変化などを認めます。
さらに血流不全状態が続くと関節運動ができなくなったり、ひどい場合は壊死(組織が死ぬ)状態に陥ります。
そこまで放って置く人はいないと思いますが、急性期は受傷による痛みもあるため,二次的な痛みと混同してしまう場合があり特に注意が必要です。
違和感の有無
スポーツ選手でも高齢者でも、テーピングをすることで現状より動きやすくなるというのが大前提の話です。
テーピングで正常な動きができなくなり、思うようなプレーができないならテーピング施行の意味すら問われます。
つまり装着後に正しい関節運動が阻害されていないか、変な違和感がないか、十分チェックが必要です。
その人に合った正しいテーピングを貼付できれば、手足がすごく軽くなったり、支えやすくなったりします。
固定を優先にすることで、違和感が生じる場合もありますが、出来る限り動きを優先できる方法が望ましいです。
一方、当然ですが、制限したい部位が十分な固定性、制動性があるかもチェックする必要があります。
使用時間のチェック
対象者がどれくらいの時間、テーピングを使用するかも重要なポイントです。
激しいスポーツ、例えばサッカーなどで前後半がある場合はテーピングが緩んでいる場合があるので、休憩時間で巻き直しの必要性があるかもしれません。
また高齢者のように、比較的長い時間貼付する場合は通気性がよい素材を使い、貼付時もかぶれ防止の方法をとる必要があります。
基本的には就寝前にはテーピングを剥がしましょう。
寝ている時にテーピングをしていても基本的には効果はありません。
ごく稀に治療的な目的でテーピングを長時間(就寝時も)使用することがありますが、皮膚トラブルを避けるためにも剥がして下さい。
重篤な障害を防ぐために
1.循環障害
急性期で腫脹が強い部位では,張れの逃げ場をつくるようにします。
手足をテーピングで一周する場合には、きつ過ぎないように末梢部の循環障害に注意が必要です。
テーピング初心者に陥りやすいのが、グルグル巻きにしてしまうことです。
このグルグル巻きは、通称「ラップ巻き」と呼ばれており、テーピングの起源である、傷ついた兵士たちに用いた方法です。
その方法を現代も使用しているトレーナーや医療従事者がいます。
確かに簡便で、痛みは軽減しますが、循環障害や運動障害を引き起こすため,テーピング上級者はほとんど使用しない方法です。
2.神経障害
神経が皮膚の浅い部分を走行している部位のテーピングでは、神経を避けるかパットをあて、神経圧迫による麻痺を避けるようにします。
特に上腕後面(橈骨神経),肘の内側(尺骨神経),膝の外側(腓骨神経)などは注意が必要です。
3.筋肉,腱の障害
筋肉や腱の部分を横断するようなテーピングをする際には、筋肉の圧迫による循環障害、腱の圧迫による腱炎、腱鞘炎を予防するために、筋肉や腱を緊張させた状態でテーピングをしたり、パット、伸縮性テープを用いるようにします。
また,循環障害同様、逃げ場を作ることも大事です。
ラップ巻きで、筋肉の圧迫しすぎる可能性もありますので注意が必要です。
4.関節の動きと靭帯の走行に注意
関節の周りに効果(必要)のない多くのテープを巻くのではなく、制限しなくてはならない動きを確認し、解剖学的靭帯の走行を考慮した上で効果的なテーピングを行います。
固定する強度、関節保護をしないといけない時期などもちろん考慮する必要はありますが、非常に多くのテープを貼るケースがあります。
限りなく少なく、必要最小限に止めましょう。
本サイトでは、テーピングを「巻く」という表現は避け、「貼る」にしています。
これは、そのような意味も込められています。
5.皮膚の状態の把握
汗、汚れ、軟膏などは石鹸で洗うか、ベンジン(アルコール)でよく拭き取り、テープが接着しやすくします。
体毛が多い場合は剃毛し、テープのずれ、除去するときの不快感を和らげるようにします。
※皮膚が敏感でかぶれやすい場合、アンダーラップを使用してください。
テーピング貼付時の注意事項 ②
シワを作らない
まず重要なのは『シワ』を作らないことです。
ではなぜシワができるとだめなのでしょうか?
テープの素材にもよりますが、テーピングは、まっすぐに垂直方向へのストレスには、何十キロという重さに抵抗することが可能です。
しかしシワが入っていたらある1点のみに、集中的に圧がかかってしまう恐れがあり、テーピング本来支えることができる力よりも軽い力で切れてしまう恐れがあり、関節や筋肉を保護できなくなります。
またシワができることで、シワの部分で皮膚を引っ張り、テーピング唯一の弱点である 『かぶれ』 を生じさせる恐れがあります。
テーピングを正しい方向に誘導し、正しいテンションで巻けばシワはできません。
シワができたということは、何かしらのサインですので、巻き方をもう一度チェックする必要があります。
※例外としてキネシオテーピングでは意図的にシワというものを作ります。
筋肉を伸ばした状態で、テーピングをゆっくり貼ります(乗せる感じで)。
筋肉が伸ばされた状態で貼付しているため、関節を中間位に戻すとテープは縮みシワができます。
そのシワで皮膚を持ち上げ、その下方にあるリンパや血流の流れを良くすることが可能としています。
それにより筋肉の状態が改善され、痛みの改善にも役立つとされています。
スポーツテーピングの理論と混同しないように気を付けて下さい。
テンションを一定に
次に重要なことはテープを貼るときは常に 『テンションを一定に保つ』 ことが必要です。
テンションを一定に保つことで、テープの行きたい方向が定まり、最短距離を通ります。
この最短距離で、関節の動きを制動します。
言い換えればテンションが一定でなければ前述したシワができる恐れもあり、制限したい動きを制限できない可能性があります。
テンションとシワは隣り合わせといえますので十分注意が必要です。
ポイントを通過する
どの関節に対してテーピングを巻く場合にも目的があります。
例えば足関節捻挫の場合には、捻挫する方向に制動をかけます。
そのテープの貼る場所は 「ポイント」 があり、そのポイントを押さえて、より効果的な部分に貼付する必要があります。
ポイントさえ押さえていれば症状にあわせてより少ないテーピングで効果が出ることが多々あります。
その一方で、ポイントがずれていると、せっかくシワなしにきれいに巻けていても、効果が半減したり、また逆効果になることもあります。
テーピング関連商品
テーピングを貼るうえで必要になってくるものについて述べていきたいと思います。
・アンダーラップ
・粘着スプレー
・リムーバースプレー
・テーピングパッド
・テーピングシザーズ
など。
テーピングをより効果的に使用するには、テープ本体だけではなく、様々な商品を利用すると良いでしょう。
ハサミやスプレーなどを併用することで、テーピングテクニックの幅が広がります。
各メーカーがたくさんの種類を出していますので、選手や患者さんに応じて使い分けていきましょう。
○アンダーラップ
アンダーラップは、アンダー(下)という名の通り、テーピングの下(テーピングを貼付する前)に巻き、テープのこすれなどに対し、皮膚を保護するために用います。
特に皮膚がかぶれやすい高齢者などには必要です。
アンダーラップの上下にテーピングテープが少し出るように貼付するため、テーピングと皮膚が接するをわずかにすることが可能です。
アンダーラップには粘着力がないため巻く前に粘着スプレーを吹き付けてから使用します。
アンダーラップは非常に伸縮性に富んでいます。
使用する際は、強めに引っ張り、やや「テカリ」が出るくらいがちょうどよいテンションです。
皮膚の保護に使用されるのが本来の目的ですが、臨床的には様々な使用方法があります。
例えば、伸縮テーピングを使用した肉離れの圧迫テーピングなどの上から強めに巻き上げると、テープの補強になりますし、さらにアンダーラップによる締め付けが可能となります。
バンテージよりもマイルドに締めつけるため違和感は少なく、そこそこ効果があります。
○粘着スプレー
アンダーラップの皮膚への粘着力付与に、テーピングテープの粘着力アップに使用するスプレーです。
テープの固定力を高め、ズレなどからくる緩みを抑えます。
アンダーラップの固定、テープの接着力強化用の粘着剤スプレーです。
乾きが早く、強い接着力が得られます。
テーピングをする際、アンダーラップを巻くことがありますが、アンダーラップには自着性が無いため、粘着スプレーを使います。
肌から20cmほど離したところからまんべんなく吹き付けるのがコツです。
量が少なすぎるとアンダーラップがずれてテーピングの効果が落ちてしまうので注意してください。